三条別院に想う
MEMORIES OF THE BETSUIN
2023年6月1日
震災と別院
東護 琢史 氏(第19組 改觀寺住職)
▲今回は、毎年雑巾講で縫った雑巾を別院のために寄付していただいている第19組改觀寺御住職から執筆いただきました。
三条別院に初めてお伺いしたのは平成11年得度考査の時であったように思う。
自坊で練習し意気揚々(?)と乗り込んでいったものの、撥の扱いを教えてもらっておらず打鏧直後に撥を鏧におさめてしまうという失態を犯したにも関わらず、無事お墨付きをいただいた。その後は、児連や青少年の活動でお邪魔することが多くなったが何よりも印象的なのは数多くの災害対策であったように思う。
始まりは平成16年7月13日に発生した、新潟・福島豪雨による災害対応だった、各地から参集したボランティアの方々が三条別院を基地として対応にあたり、私自身も掃除や片づけに参加させてもらった。
同年10月23日に起きたのが中越地震であった。
対応初期にボランティア受け入れや、支援物資の貯蔵仕分け、会議等に三条別院を活用させていただいた。
朝早くに三条別院へ集合、長岡での中継基地となっていた願興寺様まで交通規制により数時間の道程、そこから各被災地でのボランティア活動、別院に戻る頃には日はとっぷりと暮れているなんてことが幾度となくあった。
その後には、平成19年7月16日中越沖での震災、中越地震での対応が未だ続いている中での中越沖地震は自然災害に対抗する我々の無力さをまざまざと見せつけてくれたが、その時も別院は私達を支え続けてくれた。
続いた災害の余韻も過ぎ去った頃に起こったのが平成23年3月11日の東日本大震災であった。
福島原発事故によって太平洋側のルートが分断されたため、再び三条別院が支援物資輸送やボランティアの中継基地として活用された。
私自身は、この時仏青有志の会の会計担当であったため、残念ながら現地での活動ではなく、後方支援として支援物資の購入や確保にホームセンター巡りをしては、別院に物資を届ける日々を悶々と過ごしていたが、各地での支援から戻ってきた青少年活動の仲間から現地の情報をもらい、後方支援の大切さを身にしみて感じることができた。
幾度もの災害の度、三条別院は本堂を含め宗教施設というより倉庫のようなあり様となっていたが、その姿は本来の輝きを失うどころか、その輝きは普段にもまして弥陀の摂取不捨の光に満ちていたように思えてならなかった。
苦しむ人には手を差し伸べる存在が必ず現れるということ、それを支える教えがあるということ、これからもその灯は決して絶やしてはならない。その拠り所として三条別院があり続けていられるよう、微力ながら尽力していければと思う。
合 掌

東護 琢史 氏(第19組 改觀寺住職)
○次回の「三条別院に想う」は、
草間朋哉 氏(第12組勝覚寺)
よりご執筆いただきます。
▲次回は5月21日に開催されたTERAJAMの実行委員の草間氏に執筆いただきます。
2023年5月30日
三条真宗学院を卒業して
松木 祐子 氏(第24組 專明寺坊守)
▲今年3月に三条真宗学院を卒業された松木祐子氏にご執筆いただきました。
この春、 三条真宗学院を無事に卒業することができました。 坊守業や子育てがある中で毎週末に三条まで通い続けることは思った以上に大変でした。しかし、家族や友人をはじめ、学院六期生の仲間や職員の皆さまから支えていただきながら何とか最後まで続けることが出来ました。 本当に感謝しかありません。

私が真宗大谷派教師を目指すなど、それまでは考えもしなかったことですが、身の回りに次々と起きること一つ一つが縁となって、半ば強制的に学院へ通うことを決定しました。 「今となれば」 大変有り難い仏縁であったと感じています。
学院へ通う理由は当然ながら人それぞれですが、 私の場合は法事や葬儀の手伝いをする事が主な理由でした。 あくまで 「資格取得」や 「技術習得」 が一番の目的であったように感じます。 しかし、日々学んでいく中で、 当初の感覚が少しずつ変化していったように思います。
学院を卒業した今、授業で学んだことを思い浮かべると、 印象的だったこと以外はほとんど忘れてしまいました。 (ご多忙の中、 熱心に教えてくださった先生方、申し訳ありません!!)
私が学院生活を振り返って思い出すことは、 皆で輪になって食べた夕飯のことや、感極まって泣いてしまったこと、 飲み会で日付が変わるまで飲んだこと、授業の合間に愚痴を聞いたり話したりしたこと、皆で試験に合格するためにグループLINEで確認し合ったことなど……。 些細なことばかりなのに、 今思い出しても、お腹や胸の辺りが温かくなって、また皆と会えることが楽しみになります。 学院内は、互いの考えを尊重しようという雰囲気がありましたから、 自分でも驚くほど自然に過ごすことが出来ました。
入学当初の目的が変わったように感じるのは、ただ資格を取得するというよりも、ホッとできる居場所や共に法を聞いていく同朋(サンガ)を求める気持ちが強くなったからなのだと思います。
これからも友と一緒に、佛法を聞き続けてまいりたいと思います。 そして、今後はご門徒がホッと出来る居場所作りなどもやっていきたいと考えています。

松木 祐子 氏(第24組 專明寺坊守)
○次回の「三条別院に想う」は、
東護 琢史 氏(第19組 改觀寺住職)
よりご執筆いただきます。
▲次回は、毎年雑巾講で縫った雑巾を別院のために寄付していただいている第19組改觀寺御住職からご執筆いただきます。
2023年4月20日
スパイスの醍醐味
加藤 功 氏(三条スパイス研究所)
▲3月19日に春彼岸会が勤められ、今年もオリジナル精進カレー「釈迦礼弁当」が提供されました。三条スパイス研究所の加藤さんより、精進カレーならではの工夫を含めて、三条別院への想いを執筆していただきました。
三条スパイス研究所も今年で7年目を迎え、2018年から三条別院様よりご注文頂いている釈迦礼弁当も、コロナ禍による2020年を除き5回目となりました。仏教由来の精進料理を基本としまして、動物性の食材を使用せず、野菜や穀物等の植物性の食材で献立したお弁当です。春彼岸会の法要後の御斎としてご用命いただき、毎年楽しみにされているというお声を嬉しく思います。季節は初春ということもあり、蕗の薹などの山菜やこの時期旬をむかえる食材を多用し、料理を楽しむ上での五味(塩味、甘味、苦味、酸味、旨味)のバランスを意識しつつ、食材そのものが持つ味の個性と三条スパイス研究所ならではのスパイスとの相性を楽しんで頂けたら幸いです。
さて、スパイスというと「辛い」というイメージが先行してしまいがちですが、スパイスにも辛いだけではない、胡麻に似たスパイスもあったりと、日本人に馴染みのある和食にも合うスパイスはたくさんあり、今回のお弁当にも使用しております。さて、スパイスの使い方? と疑問に思われる方も多くいらっしゃると思いますが、ホールスパイスという多くは種子の形をした原形を油で熱し、深い香味を出す方法や、粉状にして卓上スパイスの様な瞬間的な香りを楽しんだり、数種類のスパイスを混ぜ合わせて肉や魚の切り身等に揉み込んだりと様々です。スパイスを使用した場合の味の構成としては主となる食材の栽培方法と類似した要素のあるスパイスを掛け合わせます。
例としては、土に根を生やしたじゃがいも等の根菜には同じ栽培方法により収穫されるターメリック(日本名:ウコン)と相性が良かったりという具合に、環境下が似た食材同士で調理すると美味しく仕上がります。前述の通り、基本的には似たもの同士を組み合わせると上手く行くのですが、料理の面白さといいますか、スパイスの魅力は未知の組み合わせを試してみるのも楽しみの一つです。
店名にもある通り日々新しいスパイスの組み合わせも研究しております。3月中旬よりコロナ禍でのマスク着用の緩和が少しずつではありますがはじまり、近場や遠方へのお出かけをご予定の方もいらっしゃると思います。お近くにお越しの際は是非お立ち寄りいただけますと幸いです。

加藤 功 氏(三条スパイス研究所)
○次回の「三条別院に想う」は、
松木 祐子 氏(第24組 專明寺)
よりご執筆いただきます
▲次号は、今年3月に三条真宗学院を卒業された松木氏にご執筆いただきます。
2023年3月11日
仏花について 白鳥 賢 氏(第15組本龍寺住職)
▲今回は、三条別院の立花講習会の担当をされている白鳥賢氏から執筆いただきました。正月から春彼岸の立花について、花材や立て方など、皆さん様々な工夫をされていると思いますが、立て方のコツ等について記していただきます。
三条別院報恩講の仏花を立てさせてもらうようになって10年以上経ったと思います。以前にもこの「三条別院に思う」で私が仏花を始めるきっかけや、仏花に対する思いを書かせて頂きましたが、今回は具体的に仏花の立て方について書いてほしいという依頼なので書かせて頂きます。
仏花を立てる場合、やはり材料は季節に合ったものを選びます。自坊では正月は「竹と松」、春彼岸は「桜」、6月の永代経法要は「夏ハゼと芍薬(しゃくやく)」、お盆は「ハラン」、秋彼岸は「紫苑(しおん)」、報恩講は「松とウメモドキ」といった具合です。お盆のハランは、夏の花材というわけではないですが、暑い時期でもわりに長持ちしますし、涼しそうに見えるので最近使っています。立てるのも簡単です。
花材の調達は、花屋さんからも買いますが、基本は自分で探します。門徒さんの庭先や畑のものを切らせてもらったり、山に行って探したり。材料については常にアンテナを張り巡らせて、毎日お参りに行くときもどこかに切らせてもらえる材料はないか探しています。私の先生は「お花は足で立てる」と言われますが、私は車を運転しながらでも探しています。お花立ては材料集めが終われば半分以上できたようなものです。以前「白鳥さんはお花のことばかり考えているんですね」と言われたので「はいそうです!」とお答えしました。

「竹」と「桜」の使い方を書いてほしいという依頼なので書かせてもらいます。竹を使った立て方ですが、今年の正月も竹と松を主にして立てました。竹は水揚げが独特で、それさえ分かっていれば難しいことはありませんし、かなり長持ちします。竹は切ってきたものをそのまま水につけておいても水揚げしません。すぐに葉が丸まってしまいます。ではどうするかというと、竹の節の中に水を入れてやります。竹の幹の裏側に穴をあけ節ごとに水を入れてやれば水揚げします。
穴のあけ方は、ドリルでも良いし、そうでなければ鋸で穴をあけたい場所に横に2本の短い切り込みを入れ、その間を金槌で強くたたくときれいに穴があきます。

もう一つのポイントは、竹の枝についてです。本堂に竹を使う場合かなり太いもの(直径8~10㎝くらい)を使います。そうすると何も手入れしていない竹ですと、そこから出ている枝は相当長く、その上懐に枝が無いために使えません。
それではどうするか。私が試行錯誤の上考え出したやり方は、添竹式です。
先ず真っすぐな太いきれいな青竹を中心に立てます。これには枝は要りません。(したがって水揚げも要りません)幹を見せるだけです。そしてその後ろに竹の先端に近い部分(幹は細いが枝が混んでいる)を添わせます。そうすると後ろの細い竹の幹は前の太い竹に隠れて見えませんし、前から見ると細い竹の枝があたかも太い竹の幹から出ているように見えます。もちろん後ろの細い竹には先程の水揚げ法を施します。添え竹は枝の出方によっては二本添わせることもあります。以上で竹の真が立て終わりです。枝の剪定は長い枝を切ったり、混んだところをすかす程度です。あとはそこに松や南天、葉牡丹、猫柳など正月らしい材料を添えれば完成です。それらの材料は正月近くなると花屋さんに売っています。以外に簡単です。写真を参考にしてください。

次に桜についてですが、自坊では春彼岸に使っています。普通の桜は春彼岸にはまだまだ蕾が硬いです。そこでまだ蕾の桜の枝を切ってきて、バケツの水につけたまま暖房のきいた部屋に入れておきます。そうすると1週間ほどで開いてきます。自坊の桜はいつも門徒さんのお宅からいただいてきます。この桜は染井吉野より少し早咲きで色もずっと濃いものです。ただ日光の当たらない部屋の中で咲かせると色が薄くなり丁度良い色になります。以前、染井吉野を加温して咲かせたことがありますが、色が薄くなりすぎて真っ白になってしまい見栄えがしませんでした。やはり失敗も勉強です。
春先になると花屋さんでは桜が出回っていますので買ってくるのも良いですが、かなりの量を使いますので花材代は覚悟してください。私は門徒さんからもらってくるのでただです。やはり使える花材がどこにあるか常に足で探しておくのが大切かと思います。

材料さえ手に入れば桜で立てるのはそれほど難しいものではありません。直真にしろ軒真にしろ途中に受筒を取り付けてそこに桜を挿します。受筒は竹でも良いのですが私はペットボトルを使うことが多いです。手に入りやすく、竹と違い肉が薄いので受筒を隠しやすいからです。受筒を取り付ける場所は直真ならば直径2~3センチくらいの心棒を立て、その途中に取りつけます。お花全体の高さの半分くらいの位置かと思いますが材料の長さによって多少変わってきます。その受筒に桜をたくさん挿して後で受筒をヒバかハランで隠します。あとは普通の仏花と同じように手に入る材料を役枝として入れれば完成です。
軒真の場合、受筒はボクの裏側に隠れるように取り付けます。取付位置や角度は桜を入れた時のことをイメージしながら決めます。数は真ならば2~3カ所取り付けます。ボクに添わせて取り付けますし、桜の枝がボクから自然に出ているように見せるため受筒も斜めに取り付けることが多いです。軒真の方が少し難しいかもしれません、直真の方が簡単で桜も量が少なくて済みます。とにかく一回やってみる事です。春彼岸頃はまだ寒いので桜の花もかなり長持ちします。ただ桜はかなり水を吸うので水ぎれにはご注意ください。
私は桜を使うときは松を一緒に使うことが多いです。桜と松は全く対照的な花材ですが、桜は松を添えることにより華やかさを増し、松は桜によって力強さが強調されます。全く違う性質の花材が一緒になることによりさらに美しさを増すように感じます。
以上ざっと書いてみましたが文章ではわかりにくいと思いますので写真を参考にしてください。
仏花が完成し本堂に荘厳したときは、自分が立てたものでありながら思わず手を合わせたくなります。そして今回の法要も頑張ろうという力が湧いてきます。この気持ちは仏花をやる人ならば必ず分かるはずです。「法要は荘厳で決まり、荘厳は仏花で決まる。」これが私の持論です。とにかく始めれば楽しいものです。一緒にやりませんか?

○次回の「三条別院に想う」は、
加藤 功 氏(三条スパイス研究所)
よりご執筆いただきます

▲次号は3月の春彼岸会でオリジナル精進カレー「釈迦礼弁当」をお願いしている三条スパイス研究所の調理人の加藤さんより執筆いただきます。精進カレーならではの工夫を含めて、三条別院への想いを記していただきます。
2023年2月1日
声明と別院とのであい
中冨 正純 氏(第23組福照寺住職)
▲今回は、三条声明会としてお取り越し報恩講をはじめ三条別院の法要・儀式に長く携わり、また23組の新組長に就任された中冨氏に、執筆をお願いしました。
多くのお寺の子供さんがそうだと思いますが、得度考査で初めて別院を訪れることが多いと思います。
私も中学生の時に弟と2人、親に連れられて別院を訪れました。その時の事はほとんど覚えていませんが、9年前と6年前に自分の子供と得度考査を受けに子供と訪れた事を感慨深く感じました。
私は、20年位前に別院で声明を教えているという事を知り参加しました。現在も実施している声明教室です。そこで当時の列座さんに本山で声明講習をやっている事を聞き、是非参加したい旨を伝えました。現在もそうですが人気の講習故に2年待たなければならないという事でした。別院では、その間お取り越し報恩講での掛役をやらせて頂き、儀式、作法を教えて頂きました。本山での講習は本科3年別科2年の課程で声明の研鑽をします。そこでは普段の自坊での法務のお勤めはもちろん、本山、別院での報恩講に出仕する為の声明を学びます。声明に興味を持ったきっかけは、遡る事25年前に、京都大谷専修学院に在籍時に体験した坂東曲との出逢いです。見たことも聞いた事もないインパクトの大きいお勤めでした。単純に自分もこれをやってみたいと思ったのです。その事を目標に講習を終えて、本山の報恩講に出仕して坂東曲を勤める夢が叶ったのです。実際お勤めしてみると、何とも言えない感動がありました。声をふり絞って念仏を唱えていると、今まで歩んできた人生の喜び苦しみ悲しみが呼び起こされるような感覚は、今も私の勇気になっている様な気がします。
教区では准堂衆として声明会に属しており、基本声明講習での、得度を受ける方や葬儀式のお勤めの指導をしています。その他、寺院の落慶法要等への出仕や法要の式事をしたりします。
私はこの度、組長の役を仰せつかりました。今年度は教区改編、慶讃法要があります。任期の3年間、組での行事の運営等をしっかりしていきたいと思います。

中冨 正純 氏(第23組福照寺住職)
○次回の「三条別院に想う」は、
白鳥 賢 氏(第15組本龍寺)
よりご執筆いただきます
▲次号は三条別院の立花講習会の担当をされている白鳥氏から執筆いただきます。正月から春彼岸の立花について、花材や立て方など、皆さん様々な工夫をされていると思いますが、立て方のコツ等について記していただきます。