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2023年5月30日
三条真宗学院を卒業して
松木 祐子 氏(第24組 專明寺坊守)
▲今年3月に三条真宗学院を卒業された松木祐子氏にご執筆いただきました。
この春、 三条真宗学院を無事に卒業することができました。 坊守業や子育てがある中で毎週末に三条まで通い続けることは思った以上に大変でした。しかし、家族や友人をはじめ、学院六期生の仲間や職員の皆さまから支えていただきながら何とか最後まで続けることが出来ました。 本当に感謝しかありません。

私が真宗大谷派教師を目指すなど、それまでは考えもしなかったことですが、身の回りに次々と起きること一つ一つが縁となって、半ば強制的に学院へ通うことを決定しました。 「今となれば」 大変有り難い仏縁であったと感じています。
学院へ通う理由は当然ながら人それぞれですが、 私の場合は法事や葬儀の手伝いをする事が主な理由でした。 あくまで 「資格取得」や 「技術習得」 が一番の目的であったように感じます。 しかし、日々学んでいく中で、 当初の感覚が少しずつ変化していったように思います。
学院を卒業した今、授業で学んだことを思い浮かべると、 印象的だったこと以外はほとんど忘れてしまいました。 (ご多忙の中、 熱心に教えてくださった先生方、申し訳ありません!!)
私が学院生活を振り返って思い出すことは、 皆で輪になって食べた夕飯のことや、感極まって泣いてしまったこと、 飲み会で日付が変わるまで飲んだこと、授業の合間に愚痴を聞いたり話したりしたこと、皆で試験に合格するためにグループLINEで確認し合ったことなど……。 些細なことばかりなのに、 今思い出しても、お腹や胸の辺りが温かくなって、また皆と会えることが楽しみになります。 学院内は、互いの考えを尊重しようという雰囲気がありましたから、 自分でも驚くほど自然に過ごすことが出来ました。
入学当初の目的が変わったように感じるのは、ただ資格を取得するというよりも、ホッとできる居場所や共に法を聞いていく同朋(サンガ)を求める気持ちが強くなったからなのだと思います。
これからも友と一緒に、佛法を聞き続けてまいりたいと思います。 そして、今後はご門徒がホッと出来る居場所作りなどもやっていきたいと考えています。

松木 祐子 氏(第24組 專明寺坊守)
○次回の「三条別院に想う」は、
東護 琢史 氏(第19組 改觀寺住職)
よりご執筆いただきます。
▲次回は、毎年雑巾講で縫った雑巾を別院のために寄付していただいている第19組改觀寺御住職からご執筆いただきます。
2023年5月13日
教区女性研修会 開催報告
開催日 2022年12月6日(火)
テーマ 『韋提希 その悲しみのゆくえ』
講 師 榊 法存氏(東北教区山形第2組皆龍寺住職)
報 告 鷲尾 信子 (第14組淨照寺 女性研修会部門幹事)
2022年12月6日、三条別院旧御堂を会場に時節柄多忙時ではありましたが、会場に47名、ZOOMで11名の方々の参加で教区女性研修会を開催いたしました。
三条教区教化委員会女性研修会部門としては最後の研修会となりましたので、先ずスタッフの副幹事より当部門の成り立ちの歴史と立ち上げ時の願いと目的をお話させていただきました。
ご講師に「皆龍サンガスクール」を主宰されている榊法存先生を山形よりお招きして、テーマ「韋提希 その悲しみのゆくえ」という講題で講義が始まりました。

講師の榊法存先生
先生は研修会案内チラシのよびかけ文 “幸せって思えた瞬間はどんな時ですか“を見られて、「家族の中で幸せとはいったい何なのか」今回、とても良い題をもらったので、家族、親子の問題を取り上げて話をしたいと仰り、題の内容を三つの章に示されました。
第1章 韋提希の悲しみ
第2章 苦しみから悲しみに変ってゆく
第3章 悲しみがどこへ向かうか
第1章で家族の問題として1500年前のインド、王舎城の悲劇を家族関係の図を示しながらお話しくださいました。
母親であり、王妃である韋提希は息子である王子から受けた仕打ちにより、韋提希の苦しみがここからわいてきた。苦しみは苦しみを生み出し、苦しみには“貪り“ “怒り“ “愚痴“ の三毒があり、仏教では私たちが逃れられない “四苦八苦“ の苦しみから始まるとお釈迦様が教えになられた。
韋提希はこの苦しみを取り除いてほしいとお釈迦様に助けを求め、愚痴を言い続けた後、心が落ち着いたところでこの苦しみの原因は自分の居場所がないという苦しみであると気づき、これが韋提希の三毒の苦しみから悲しみに変った。そこでお釈迦様に、苦しみの無い処を説いてくださいと懇願した。
第2章ではお釈迦様の最後の教え “四依“ をお話しくださり、仏教では “抜苦“ という楽をあたえるより苦を抜くということが基本で慈悲ということも教えてくださいました。苦しみから悲しみに転換のきっかけは痛みは同じでも方向が違っていると教えてくださいました。

講義の様子
第3章では韋提希が懇願した清らかな苦しみの無い仏の世界の色々をお釈迦様がお見せになられましたが、韋提希は極楽世界の阿弥陀仏の処に生まれたいと願い「我に思惟をおしえたまえ」「我に正受を教えたまえ」と心から願いお釈迦様に求めました。この願いは法蔵菩薩が求めたものと同じで、韋提希も法蔵菩薩と同じことをやった。この事は観経の一番大事なところであると教えてくださいました。
正しく考える思惟と正しく受け止める正受。 “何を考えてゆけばよいか“ が浄土真宗の出発点と教えてくださいました。思惟、正受を求めた韋提希の願いは苦しみが悲しみへと転換した自分の救いではなく夫の頻婆娑羅王のすくいを願った心をお釈迦様はくみとりほほえんだ。このお釈迦様の微笑は韋提希が息子の阿闍世のすくいをも願っているとの親鸞聖人のお考えも話してくださいました。

各班別座談の様子
韋提希も頻婆娑羅王も仏教を学んでいたから苦しみから悲しみに変ってゆくチャンスがあったのです。苦しい時仏教の教えがよみがえるのでとりあえず仏教の話を聞いておいてほしいと先生はおっしゃいました。
座談後の質問にも丁寧にお答えくださり、時間がまだまだ足りない様子の中で研修会を終えました。
2023年5月3日
中島岳志氏が首相を対象とした一連のテロ事件と自由の保持の困難について語る(三条別院公開講座2023)
昨年の安倍元首相銃撃事件に続き、
岸田首相への爆弾投下事件が起こりました。
今後もテロの連鎖が続くと、
これを抑え込むための治安維持権力の拡大が懸念されます。
私たちはいかにして自由を保持していくべきか。
社会に自主規制が蔓延しないためにはどうすればいいのか。
岐路に立たされた日本社会のあり方を、
政治の側面から考えたいと思います。(講師より)
メディア等多方面で活躍される政治研究者である中島岳志氏をお招きして開催する2023年真宗大谷派三条別院公開講座。昨年は仏教の「利他」の現代的意義についてお話しいただきました(YouTubeリンクは下記参照)。今年は、引き続き、混迷する現代政治を主題にお話しいただきます。
【講師】中島岳志氏(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授)
【講題】「日本政治はどこへ向かっているのか」

【日時】2023年6月12日(月)18:30~21:00
【会場】三条別院本堂(三条市本町2丁目1-57) 駐車場あり60台
聴講無料、事前申込不要。YouTubeでライブ配信も行います。
【講師プロフィール】
元首相の銃撃事件と現首相への爆弾投下事件について、新聞・テレビ・ラジオ・インターネットメディア等で積極的に発言されている姿が印象的な中島岳志氏。専門は政治学だが、研究領域は多岐にわたる。
『テロルの原点-安田善次郎暗殺事件-』(『朝日平吾の鬱屈』改題)『血盟団事件』等の著作に代表されるように、戦前の政治テロも研究対象であり、『親鸞と日本主義』のように仏教、浄土真宗にも造詣が深い。
東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院/環境社会理工学院・社会人間科学コース教授。現代日本政治や日本思想史、インド政治などを研究。
主要な著作は、『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』、『インドの時代』『「リベラル保守」宣言』ほか多数。
昨年の公開講座で講義(「利他と他力」、三条別院YouTubeチャンネル参照)していただいた「利他プロジェクト」の著作としては、『利他とは何か』(共著)、『思いがけず利他』等がある。
【日程】
18:30 開会式
18:40 講義(120分)
20:40 講義終了、質疑(20分)
21:00 閉会式、終了
YouTubeでライブ配信します。ぜひチャンネル登録をお願いいたします。
三条別院YouTubeチャンネル
昨年の公開講座:2022年6月25日「利他と他力」(中島岳志氏)
【問い合わせ】真宗大谷派三条別院
TEL 0256-33-0007、E-MEIL sanjo-betsuin@wing.ocn.ne.jp
2023年4月20日
スパイスの醍醐味
加藤 功 氏(三条スパイス研究所)
▲3月19日に春彼岸会が勤められ、今年もオリジナル精進カレー「釈迦礼弁当」が提供されました。三条スパイス研究所の加藤さんより、精進カレーならではの工夫を含めて、三条別院への想いを執筆していただきました。
三条スパイス研究所も今年で7年目を迎え、2018年から三条別院様よりご注文頂いている釈迦礼弁当も、コロナ禍による2020年を除き5回目となりました。仏教由来の精進料理を基本としまして、動物性の食材を使用せず、野菜や穀物等の植物性の食材で献立したお弁当です。春彼岸会の法要後の御斎としてご用命いただき、毎年楽しみにされているというお声を嬉しく思います。季節は初春ということもあり、蕗の薹などの山菜やこの時期旬をむかえる食材を多用し、料理を楽しむ上での五味(塩味、甘味、苦味、酸味、旨味)のバランスを意識しつつ、食材そのものが持つ味の個性と三条スパイス研究所ならではのスパイスとの相性を楽しんで頂けたら幸いです。
さて、スパイスというと「辛い」というイメージが先行してしまいがちですが、スパイスにも辛いだけではない、胡麻に似たスパイスもあったりと、日本人に馴染みのある和食にも合うスパイスはたくさんあり、今回のお弁当にも使用しております。さて、スパイスの使い方? と疑問に思われる方も多くいらっしゃると思いますが、ホールスパイスという多くは種子の形をした原形を油で熱し、深い香味を出す方法や、粉状にして卓上スパイスの様な瞬間的な香りを楽しんだり、数種類のスパイスを混ぜ合わせて肉や魚の切り身等に揉み込んだりと様々です。スパイスを使用した場合の味の構成としては主となる食材の栽培方法と類似した要素のあるスパイスを掛け合わせます。
例としては、土に根を生やしたじゃがいも等の根菜には同じ栽培方法により収穫されるターメリック(日本名:ウコン)と相性が良かったりという具合に、環境下が似た食材同士で調理すると美味しく仕上がります。前述の通り、基本的には似たもの同士を組み合わせると上手く行くのですが、料理の面白さといいますか、スパイスの魅力は未知の組み合わせを試してみるのも楽しみの一つです。
店名にもある通り日々新しいスパイスの組み合わせも研究しております。3月中旬よりコロナ禍でのマスク着用の緩和が少しずつではありますがはじまり、近場や遠方へのお出かけをご予定の方もいらっしゃると思います。お近くにお越しの際は是非お立ち寄りいただけますと幸いです。

加藤 功 氏(三条スパイス研究所)
○次回の「三条別院に想う」は、
松木 祐子 氏(第24組 專明寺)
よりご執筆いただきます
▲次号は、今年3月に三条真宗学院を卒業された松木氏にご執筆いただきます。
2023年4月13日
結の会のつどい 開催報告
開催日:2023年3月10日(金)
講 師:佐賀枝 夏文 氏(大谷大学名誉教授・元高倉幼稚園園長)
会 場:三条別院 旧御堂 (ZOOMによるオンライン参加も可)
講 題:「人生の物語 ~先輩たちが子どもたちに伝えた世界~」
報 告:松原 典子(第17組 慶応寺・結の会実行委員)
「結の会」研修会に参加して
2023年3月10日に「結の会のつどい」が開催されました。
ご講師は大谷大学名誉教授で元高倉幼稚園園長の佐賀枝夏文先生です。『人生の物語 ~先輩たちが子どもたちに伝えた世界~』という講題のもと、先生の「サガエさんです」という穏やかな自己紹介から始まりました。今回私はZOOMで参加しましたが、画面越しにも会場の和やかな雰囲気が伝わり、先生も終始会場の雰囲気が良いと仰っていました。
はじめに“人生の物語”ということで、先生ご自身のこれまでの生い立ちでの苦労や葛藤等をご紹介され、人生を“起承転結”に例えてお話しされました。次に、“先輩たちが子どもたちに伝えた世界”ということで、明治期、大正期と真宗大谷派の慈善活動や児童と宗教に関する歴史を振り返ってお話しいただきました。

講義の様子
ご自身の園長時代、先生が他の職員の方々に園長がうまくできなくて謝った時のお話もされ、その時「サガエさんが居てくれるだけで良い」と言ってもらえたことが嬉しく、それから園で過ごす時間が愛おしく感じたと仰いました。人は、ジグソーパズルの真ん中の絵の描かれたテーマ(主役)になりたがるが、端の模様の無い部分でもそのピースが無いとパズルは完成しない、「役割を果たせないからといって、いらない人はいないのだ」とその時わかったとお話しくださいました。
座談会後のまとめの講義では、「子どもにナムアミダブツって何?と聞かれたら先生はなんと答えますか」との質問がありました。先生は「そんな風に訊いてくれたことがまず嬉しいと伝える」とのことでした。そして、答えない、一緒に考えると仰いました。答えたことが答えではない、一緒に自分の中で求めていること、言葉になることを探してみる、一緒にお参りする、まずは座って手を合わせてナムアミダブツから始めましょう、とのことでした。人生の長い間、共に問い続けることが大事とのことです。

各班別座談の様子
結の会として先生に依頼させていただいた際「なぜ生きるのはつらく、苦しいのか」というテーマでもお願いしていました。先生はそのテーマに共感され、モヤモヤやイライラ、怒りの感情のお話をされました。怒りは、自分の心を守るための防衛であり、その怒りの元を消すのが今の時代の通念だが、消すのではなく、元の理由を考えるべきとのことでした。怒っている人がいたら、逃げずに共に立ってあげる、答えるのが答えではない、後追いでしか答えは出てこない、まずは聞いてあげる、笑顔でまずは「聞かせて?」と伝えることが大事とのことでした。自身の怒りの感情については、頭で考える「意識の世界」と「感情の世界」は別のもので、感情は大きな力を持つので、コントロールができない、とのことでした。生きていくコツは考えないこと。受け入れられなかったり、スルー出来ないから悩む、何とかしようとしない、しようとするから苦しい。哀しみは哀しみとして居場所を置いて、降参したらいいとお話しされたのが印象的でした。
最後に、「休む時に『ああ幸せ』と思って寝ましょうね、あたたかな気持ちで寝ましょう」と仰っていた先生のにこにことした穏やかなお顔に、参加者全員が和み癒されたかと思います。

講師の佐賀枝夏文先生と結の会実行委員の皆さん
全体を通して、先生の相手に寄り添う姿勢に感銘を受けました。答えることが答えではなく、共にあること、一緒に考えることが大事だということ、子どもやご門徒の皆様との向き合い方として、深く心を打たれました。
今回の研修を受け、「結の会」は今後もいろんな立場の方が参加しやすいよう、相手に寄り添った研修会を企画していけたらと思っています。お寺の研修会の第一歩として、『結の会』にどうぞご参加ください。共に考え、学んでいけたらと思います。
結の会では公式LINEを開設しております。詳細はこちら → 結の会LINE
結の会実行委員募集中、詳細はこちら → 結の会実行委員募集