どんな日も、どんな時代も、そばにある。

三条別院|浄土真宗 真宗大谷派
三条別院|浄土真宗 真宗大谷派

三条別院に想う

新型コロナウイルスで分断する世界の中で(南米開教監督・ブラジル別院輪番 塚本智光氏)

▲新潟県を含む39県は5月14日に緊急事態宣言が解除され、5月21日に関西2府1県、25日には首都圏の1都3県と北海道の解除が行われました。しかし一端封じ込めに成功したと言われている中国や韓国でも集団感染が発生し「第2波」が懸念されています。そんな中、感染者数が世界第2位(5月25日現在)となったブラジルは、感染拡大は現在も継続しています。各国が独自で対応を迫られていて世界の「分断」が報道されるようになりました。現在ブラジル別院輪番を勤められている塚本智光氏(第18組等運寺前住職)は、世界や社会の分断が問題となる中、ブラジルで「非日系」の真宗門徒に触れ、「同朋」という言葉を再認識しているといいます。


ブラジルのコロナウイルスの感染者が34万人、死亡者も2万2千人を超えました(5月25日現在)。たった一日だけの新規感染者が2万人を超え、死亡者が千人を超え、終息に向かう傾向など全くなく、実数はその10倍以上だという情報もあります。会議のため日本から帰国したその日から2ヵ月間、大半は自室で自炊をし、別院内の6名は互いにメールで連絡を取り合い、ZOOMで会議をしています。通いの職員5名は自宅待機です。

南米開教区に赴任してまだ2年にも満たないことですが、その短い期間の中で「同朋」また「僧伽」という言葉の重要性を再認識させられています。南米開教区では、毎年20~30名の帰敬式受式者があって、真宗門徒の歩みを始められる方が誕生しています。特筆すべきは、その受式者の過半数以上が非日系のブラジル人であるということです。

日本的な感覚では、生まれ育った家や、肉親の葬儀をご縁と真宗の教えに出あい、帰敬式を受けることが多いのです。ところが、非日系のブラジル人受式者たちは、真宗門徒の家に生まれ、仏教で親の葬儀を執り行った者は一人もいないのです。ブラジルはカトリックが国教ですから、幼少の時にカトリックの洗礼を受け、学校では「なぜ」という疑いを持つことすら許されない宗教教育を受けます。そこに疑問を感じ、満足できない人々が、純粋に仏教や他の宗教に教えを求めて寺に来るのです。

別院の彼岸会法要で、非日系のブラジル人に感話をしてもらったことがあります。彼は日曜礼拝の仲間に、まず「僧伽」として受け入れてもらったことに深く感動したと話しました。そして、ともに「僧伽」であることに気づいたことで、次第に「法」と「仏」とがすんなりと理解できたと述べました。「仏法僧」ではなく、「僧法仏」の逆順なのです。思えば、親鸞聖人も法然上人を「よきひと」といただき、法然上人は「ひとえに善導に依る」とおっしゃいました。教えとの出会いは、過去から現在に流れるものではなく、現在の身近なところから過去へと訪ねるものなのでしょう。ともに念仏申す「僧伽」たれという呼びかけとしての本願には、言語も国境もないのだと、あらためて思いなおしたことでした。

今年の世界同朋大会が中止になってしまいました。日本語を話せないブラジル人真宗門徒8名を含め、32名の参加を予定していました。残念です。次回の第14回世界同朋大会は、2025年ブラジル大会の予定です。

私たちは、たぶん「同朋」という言葉にも耳慣れてしまったのかもしれません。あらためて人としてのいのちの尊さに目覚め、国籍を超えてその感動をあらたにする同朋大会とならんことを念じています。それまで在職するのかどうかは私の知るところではありませんが、ご縁がありましたらご参加ください。

塚本 智光 氏(南米開教監督・ブラジル別院輪番 三条教区第18組 等運寺前住職)


○次回の「三条別院に想う」は、

伊藤 大信 氏
(東京教区横浜組西敎寺副住職 東京教区教化委員会青少幼年部門幹事)

よりご執筆いただきます。

トップへ戻る